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AI活用

Cloudflare OS が出た。「OS」ではないけど、たぶん重要なやつ

本記事は公開時点(2026年08月06日)の情報です。AI関連のサービスや仕様は変化が速いため、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。

昨日(2026年8月5日)、Cloudflare が「Cloudflare OS」を発表しました。名前だけ見ると Linux の親戚のようですが、カーネルの話ではありません。Cloudflare が自社の数千人の社員に使わせていた AI ワークスペースを、Apache 2.0 ライセンスでまるごとオープンソース化したというもので、発表当日にさっそく手元で動かしてみました。

第一印象は「会社ごと入れる ChatGPT」

起動すると「What are we working on?」という入力欄が出迎えてくれます。見た目はよくある AI チャットです。

Cloudflare OS のホーム画面。チャット入力欄とモデル選択、Get Started の項目が並ぶ

ただ、チャットの下に並ぶ「Get Started」の項目を見ると毛色が違います。「スプレッドシートからインサイトを見つける」「チームのミーティング資料を作る」「小さなツールを作る」。つまり質問に答えるだけでなく、成果物(ドキュメントやアプリ)を作って、それを社内で共有するところまでが守備範囲です。

モデルはマルチプロバイダ対応で、画面上のセレクタから追加・切り替えできます。Cloudflare Workers AI のモデルに加えて、Anthropic(Claude)・OpenAI・Google が並び、Ollama 経由でローカル LLM まで選べるのは自社ホスト型ならではです。

Add AI Model の画面。Workers AI / Anthropic / OpenAI / Google / Ollama のモデルが並ぶ

独特な概念が4つある

ドキュメントを読むと、独特な用語が4つ出てきます。ここを押さえると全体像がつかめます。

Gadget(ガジェット)

Cloudflare OS における「ファイル」です。ただし Word 文書や Excel のような固定のファイル形式ではなく、それぞれの Gadget が AI の書いたコードで動く独立したアプリです。スライドもホワイトボードも集計ダッシュボードも、必要になったらその場で AI に作らせる。オフィススイートの「ファイルの種類」という概念を、生成 AI 前提で作り直した感じです。

Blueprint(ブループリント)

Gadget のテンプレートです。誰かが作った便利なアプリを、ロジックだけを複製して自分の環境で使えます。保存データ・会話履歴・認証情報は複製に含まれない設計になっていて、社内で「あの部署のあのツール、うちでも使いたい」を安全にやるための仕組みと読めます。

Workspace(ワークスペース)

複数の Gadget を束ねる作業環境で、リアルタイム共同編集に対応しています。実装的には各 Workspace が Cloudflare の Durable Object として動いています。

Gatekeeper(ゲートキーパー)

個人的に一番面白いのがこれです。GitHub・Google・Slack・Notion などの外部サービスへのアクセスを仲介する層で、AI がそれらに対して何かしようとするたびに人間の承認を挟めます。実行前にアクションをシミュレーションして、あとからまとめて承認する非同期フローもあります。

Gatekeepers の一覧画面。Confluence / Email / GitHub / Google / Linear / MCP Server / Notion / Slack / Supabase などが並ぶ

一覧を見ると、SaaS 連携だけでなく「Email(受信メールをトリガーに Gadget を起動)」「Scheduled Tasks(定時実行)」といった自動化の入口も Gatekeeper として並んでいます。そして汎用の「MCP Server」があるので、任意の MCP サーバーを繋げば既存の MCP エコシステムの資産もそのまま活かせます。

セキュリティ設計が「デフォルト遮断」

AI エージェントに社内データを触らせる話には必ずセキュリティの不安がついて回りますが、Cloudflare OS の設計は明快です。

  • 各 Gadget はデフォルトでインターネットアクセス禁止。明示的に許可した接続(バインディング)しか使えない
  • サーバー側は Dynamic Worker、クライアント側は iframe サンドボックス + CSP で隔離
  • 認証は Cloudflare Access ベースで、リクエスト単位で検証

「AI が書いたコードを走らせる」前提のプロダクトとして、まず閉じておいて必要な穴だけ開ける、という方向で一貫しています。野良の ChatGPT 利用(いわゆるシャドー AI)に悩んでいる情シスにとって、承認フロー付きの公式な逃げ場を用意できるのは大きいはずです。

動かすのは簡単、ただしアーリーアクセス

リポジトリは GitHub で公開されています: cloudflare/cloudflare-os(カスタマイズ用の cloudflare-os-starter もあります)

手元で試すだけなら、リポジトリを clone して

pnpm install
pnpm run-local

で localhost:8787 に立ち上がります。Cloudflare アカウントへのデプロイは公式のデプロイページから数クリックです。オープンソースの workerd ランタイムでの完全セルフホストも予定されていますが、そちらのドキュメントはまだ準備中でした。

注意点としては、現時点では明確にアーリーアクセスです。未実装の機能が多く、外部からのコントリビュートも小さな修正以外はまだ受け付けない方針とのこと。本番の社内基盤にいきなり据えるのは早いですが、「AI ワークスペースを自社インフラで持つとはどういうことか」を体感するには、いま一番手軽な教材だと思います。

どう受け止めたか

ここ1年、「社員に AI をどう配るか」という相談が増えています。選択肢は ChatGPT Team や Claude for Work のような SaaS が中心でしたが、Cloudflare OS は「自社でホストする AI ワークスペース」という第三の選択肢を、しかも無料の OSS として投げ込んできました。Gatekeeper の承認フローや Blueprint の共有設計は、SaaS 版 AI ツールにはない「会社の統制の中で使わせる」ための道具立てです。

弊社でも検証を続けて、実務に耐えるかどうかはまた記事にします。「社内への AI 導入をどう統制するか」という段階のご相談も、気軽にお問い合わせください。